憲法総論(1)
<憲法の全体構造>
憲法は大別すると、①人権と②統治からなります。
では、この二つはどのような関係にあるのでしょうか。
「個人の尊厳」の実現、これが憲法の究極の目標となっています。(=国民の個人個人が皆尊重されるべき)(第13条前段)
その理念を達成するために人権があります。
人権の学習は判例が中心です。
さらに、その人権を確保するためのシステムとして統治があります。
統治の学習は条文等細かい知識が中心となっています。
<新自由主義>
新自由主義とは
「俺を好きにさせろ!ほっとけ!」
ということ。
つまり国家から国民が干渉されないということです。
そのため、敵である国家権力の濫用を防ぐために、その力は弱く、小さい方が望ましいと考えます。
そのためには、権力を分割すればいいのです。
具体的には以下の方法が採用されています。
①三権分立
国家権力を立法(国会)・行政(内閣)・司法(裁判所)に分割。
②二院制
③団体自治
<国民主権>
国民主権とは、国の政治を最終的に決定する権威あるいは権力が国民にあることをいいます。(憲法前文・第1条)
では、主権とは具体的に何なのでしょうか。
主権は一見すると強い方が望ましいと考えられます。
これは「権力的契機」を重視する説です。(=プープル主権)
「権力的契機」とは、主権者たる国民が国の政治のあり方を最終的に決定する権力を有するという意味です。
この説の見解によると、直接民主制が政治本来の姿であることになり、国民が自ら投票で決めるということになります。
そして国民とは、実際に選挙で投票できるもののことを指します。
国民を、投票という力を現実的に使える者と定義しており、具体的です。
しかし、この説によると、国政について判断能力の十分でないものが直接判断することになり、独裁者に洗脳され、利用されたり、国政が混乱する危険性があります。
そこで、主権とは国民が直接権力を行使するのではなく、あくまで、代表者が国民のために政治を行うという「正当性の契機」を重視するのが通説となっています。(=ナシオン主権)
「正当性の契機」とは、国民が国の政治のあり方を最終的に決定する権威が国民にある、という意味です。
「政治はプロに任せよう!」という見解です。
この見解によると、代表民主制(間接民主制)が原則ということになります。
そして国民とは、抽象的な全国民(乳幼児も含む)を指します。
この話はかなり難しいので、なんとなく理解しておけば十分でしょう。
一応、下記にまとめておきます。
【主権とは何か】
・「権力的契機」を重視(=プープル主権)→直接民主制が原則→国民の定義が具体的(投票という力を行使できるものが国民)
・「正当性の契機」を重視(=ナシオン主権)→代表民主制(間接民主制)が原則→国民の定義が抽象的(乳幼児含む全員が国民)
・通説は「正当性の契機」を重視する。
<現行の日本国憲法のシステム>
現行の日本国憲法は、原則として代表民主制(間接民主制)をとっています。(第43条)
ただし、例外的に次の3つの場合のみ、直接民主制を採用しています。
③最高裁判所裁判官の国民審査(第79条)
この部分は、後で詳しく解説します。